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目的

 人建築事務所は人間が活動する空間をつくることを目的としています。

 住まいは家族生活の中心的な舞台として、今まではその役割を果たしてきました。現在では、社会の状況も大きく変わり、家族のかたちも様々になり、暮らし方も多様化しいます。そのような中、今までの画一的な家では、そこに住まう人間の活動を発展させ展開させることは難しくなってきたといえるでしょう。

 住まいは外部環境から生命を守るだけでなく、生活の基本となる場所であり、社会で安心して活動するための拠り所でもあります。現在日本の社会は閉そく感に満ちていますが、一人ひとりの人間の可能性はまだまだこんなものじゃあないと感じています。そんな人間の可能性を発展させ、展開させる空間つくりを目指しています。

 それではこれからはどんな空間つくりが展開するか想像してみましょう。原発のことや、枯渇する化石燃料のこともあり、エネルギーの使い方は今後大きく変わるでしょう。それにともない、大量生産・大量消費の時代が終わり、大きな組織や大きな工場も、そのいくつかは解体されていくかもしれません。そうすると遠くのオフィスや遠くの工場まで通う人の数は、かなり減ることになります。そこで皮肉なことに職住近接(職場と住まいが近くなる)が実現されます。それでは仕事がなくなるかというと、大量にモノをつくる仕事はなくなりますが、必要なモノをきめ細かく対応しながらつくる仕事や、丁寧に対応するようなサービスが増えるでしょう。そうです、機械ではなく人間のはたらく場面や活躍する場面は、今よりも増えるのです。

 生活と仕事を寸断してきた、家と仕事場との物理的距離は近くなります。家の中に仕事場をもつケース、家の近くに仕事場をもつケース、家の近くで仕事場をシェアしあうケースなどが考えられます。仕事場をシェアしあうケースでは、別々の組織や、別々の職種の方々が同じフロアを共有します。休み時間に談笑し合ったり、ちょっとした仕事の手伝いのしあいから、職種や業種を越えたあらたなアイデアが出たり、発展があるかもしれません。また、そこには会社組織は引退されたけどまだまだお元気なご年配の方々にもお集まり頂き、経験や能力をみんなでシェアさせて頂くのです。仕事にどんどん人間力が必要になれば、経験豊かな年配者の知恵や技術は、より必要になりますよね。年配者に活躍の場ができれば、社会の年齢構成は悲観することなく、その能力をいかんなく発揮して頂ければいいのです。また、地域にそんな場所があれば、子ども達は安心して近くで遊ぶことができますね。

 東北の大震災での問題のなかに、実際の災害が起きた日中に、若者や男性がその町に居ないから、助け合いが機能しなかったということがありました。住んでいる地域の中やその近くに仕事場があれば、そのような問題も解決されますね。また、一人暮しのお年寄りのおうちの空き部屋を若者がルームシェアしながらケアをするなど、既存のインフラを使いながら持ちつ持たれつの仕組みや、それを可能にするあたらしい家の空間構成なども、検討の余地があります。

 ここに書いた例は現実から飛躍しているのかもしれません。しかし人間の活動の可能性は、今迄の枠を飛び越えたところで、展開していくのかもしれません。住まいつくりの中に、そんな発想や提案があってもいいのではないでしょうか。いや、そんな可能性を探り合う住まいつくりは、きっとたのしいはずです。住まいは家族が育みあうところであり、人と人、そして人と社会とを接続するつなぎ目(縁)でもありますから。