家を建てる前に

家について話し合いましょう

今までに、気候風土について、健康材料について勉強してきました。今回からは家について家族で話し合いましょう。

まず、家とは何なのか?食事をして寝る所ですか?「そんな事なら会社でもしている」そんな答が返ってきそうですね。最小単位の社会であり、社会の基盤でもある家族が住まう処、これが家だと考えています。だから2号さんの家は通うだんなの家ではなく、会社で寝食をしていてもそれは家ではないのです。営利のために集まり、寄り添うのでなく、無償の愛情を注ぎ合う社会の基本単位、これが家族であり、その家族が生活する場が家なのではないでしょうか。ですから、家族が愛情を育み、成長し、また老いていく場でもあるのです。

気候風土によっても家への考え方が代わります。西欧では厳しい自然を外敵とし、それから守るシェルターとしての役割も果たしてきました。一方私達の住む日本では、土地により違いはありますが、四季を味わい、自然と共に暮らしてきたのです。

民族性によっても違います。遊牧民族は一生そこに住みつづける事はなく、農耕民族は何代も同じ家に住んできました。私達日本人の土地への執着心は農耕民族である所以でしょう。

借家と持ち家でも違います。戦前は都市生活者の9割程は借家住まいだったそうです。ところが現在では家を持つことが当たり前のような感覚があります。これは、良し悪しは別として、住宅の公的供給に不熱心な行政のため、また政策的に持ち家を推奨したため「持ち家」に執着せざるをえない状況があるのです。また戦後の混乱時に、借家人保護のための、借地借家制度がそのままであったため、民間貸家が成長できなかったいう人もいます。とにかく国の陰謀だろうが何だろうが、持ち家がほしい、これが私達の本音です。

でもどうせ建てるのなら、国の策略や、コマーシャリズムに惑わされる事なく、家を建てたいものですね。また「家を建てる事が一生の仕事」のような固定観念にとらわれることなく、あらゆる選択肢も視野に入れる必要があります。自分達家族がより人間らしく、成長し合う場として、より良い方法を模索しながら「家」について大いに話し合ってください。

家についてのご意見等お聞かせください。


玄関について

玄関とは「幽玄な僧坊への関門」という意味で鎌倉時代の禅僧栄西が、京都東山に建仁寺を建立したときに僧院の門を命名したのがはじまりだそうです。住宅においては、正式な客を迎える儀式的な場所であり、ふだんは内玄関や勝手口を利用していたそうです。このような経緯から家の顔として、財力の象徴のような華美な玄関が好まれてきました。

現在では、客を迎え入れるよりも家族が利用する家の方が多いのではないでしょうか。その家に合わせた玄関を作ることが必要です。家族が、玄関の前で立ち止まり、入る事が躊躇されるような玄関や、入ると緊張するような玄関では困ります。家族を外に追い出す場ではなく、暖かく迎え入れる場にしたいですね。

玄関についてのご意見等お聞かせください。


リビングルームについて

リビングルームという概念はもともとアメリカの概念だそうです。リビングルームで何をしてきたのかというと、家族や地域社会というコミュニティーを育み、形成する場であったそうです。日本家屋においては、茶の間や、縁側がこれらの役割を果たしてきたのではないでしょうか。ところが日本でも多くの家に採用されているリビングルームは、豪華な応接セットを配置し、1年間に何回も使われない粗大ゴミ(高級応接セット)が部屋の主になっているのです。応接セットに腰掛けてもくつろげないので、下に座って、ソファーを背もたれに使うのが関の山です。これらはコマーシャリズムの中で作り上げられたイメージであり、本来の目的を果たせる場にしなくてはなりません。家族が団欒し、憩える場。近所の人や友人、親戚が集まり憩える場。堅苦しい場ではなく、くつろげる場を作ることが必要ではないでしょうか。この空間に家族の思いのたけを存分にぶつけてください。家族みんなで考えた空間であれば、親しみも沸き、自然と家族が集い、人が集まる空間になるのではないでしょうか。

リビングルームについてのご意見等お聞かせください。

 


子供部屋について

私は、子供部屋という特定用途の部屋は必要ないと考えています。何故なら、子供が出て行った後には、納戸にしかならないからです。また、子供部屋を与える事が、子供の自立を促すかのように考えられてきましたが、物理的に自立を促したところで、精神的な自立には至らないからです。よく言われるのは、立派な子供部屋を与えられた子供は、そこに満足し、自ら創り出す努力をしなくなると言う事です。不自由な空間だからこそ、自ら創り出し、努力をする、そのように考えます。

かといって、現在の生活実態や、要求から子供部屋なしとはなりづらいと思います。そのような場合はなるべく個室化せず、大部屋的に配置できると良いでしょう。また、閉鎖的にせず、パブリックなスペースの一部を利用するのも良いでしょう。

いずれにしても、子供がどうあるべきかよりも、家族がどうあるべきかを考え、その上で子供の位置付けや、将来など話し合いながら楽しんで造ってください。小さなお子様の場合などは、空間だけ確保して、おいおい造るぐらいのスタンスで良いのではないでしょうか。

 


廊下について

個室から個室をつなぐ廊下だらけの家では、ワンルームマンションになってしまいます。家族や、来客者に顔を合わせず個室に入れる造り、個室から外に出て行ける造りは、家族を形成して行く上で、障害になるかもしれません。生活動線を短くする上でも、極力廊下は短く、兼用空間にしたいですね。居間の一部が廊下で充分ではないでしょうか。

 


階段について

階段は、ただの移動空間で終らせたくないですね。繋ぎの空間にできれば良いと思います。広めに緩くとって、子供の遊びの空間にするのも良いでしょう。遊び場としての魅力は充分です。

 


個室について

個室だけに関わらず、全ての部屋、部分に共通しますが、特定用途にしばられない、家造りをしたいですね。特定用途に縛られた空間は、その用が変化すると、なかなか対応ができません。時代の流れは急速で、住まい方も、刻一刻変化しています。また、家族も成長し、変化していきます。その変化についていけない空間は、使えない空間となってしまいます。先々の事も考えて、フレキシブルに対応できる、空間造り、成長できる空間造りを心がけたいですね。ただし、全く用途を無視した空間では、せっかく造る意味がなく、箱でいいかと言う話になってしまいます。ここらへんのバランスを上手に捉えて造りたいですね。


家造りについて

私達は、家造りに対して、かなりのエネルギーを注ぎます。それでも注ぎ足りないのが現状です。時間の事で言えば、許されるのであれば、計画から竣工まで2年間頂きたいですね。現実には、なかなか難しいですが、可能であれば、それくらいの期間を費やして、家を造りたいです。

計画では、気候風土を調査し、家族の現状、家族のこれから、暮らし、文化、などを話し合います。計画が終れば、基本設計です。基本設計では、パース若しくは模型で確認していきます。実施設計には、細かなディティールを検討しながら作図が進みます。実施設計が終ると、山で木を選定します。東に立つ柱には、東に立つ木を使い、南には南の木、それぞれの特性があります。そして、必要な木を必要なだけ選定することができます。秋になると伐り倒します。それから葉をつけたまま、葉枯らしします。正月を過ぎて製材、そして刻みとなります。春前に建前、梅雨前には、屋根、外壁が終り、秋には完成ですね。とっても高いのではと思われるかもしれませんが、そんな事はないんですよ。

ずいぶんゆっくりとした時間が流れるように思われるでしょうが、時間の制約がなければ、このよう家造りをしていきたいですね。このような事を私の友人達が、がんばってやっています。時代に逆行すると思われるかもしれませんが、時間をとって、こんな家造りをしてみるのはいかがでしょうか。